ひどく

なんだろう あれは

とおくのほうを 

たいへんな はやさで はしるのは

ずうっと ずうっと

とおくのほうを めったやたら に ぶんなぐられて

からだ が ちぎれちぎれ に

なっているような

ひくいひくい おとを たてて

いるような

むやみに はやい

むかしのともだちが

おそろしい め に

あっているのだろうか

いまわしい きおくというきおくが

もう とめようがない つよさで

こちらにむかって

はしりだして いるのだろうか

あるいは 

はな を どっさりつんだ くるまが

ひきさかれながら

みょうに わらったり している

ところなのか


むやみにはやいあれは
ひどくとおくのほうを


川崎洋「ひどく」