反転

思考は、世界に存在する事物を対象化する。
私に対する事物を見ることで思考は生まれる。


私に対する事物は、私にとって常に反転している。

網膜が上下を逆転し、脳がそれを反転させている。
私は世界を「ある見方」で見ている。


それを知って、「あるがままはどこにある」と、凝った悩み方をするものもいる。

ありのままに見られないのは、見ようとするから見られないのかもしれない。
いま見ているものを離れたありのままがあるか。


私は自分の顔を見ることがない。決して対象化できない。
しかし、世界は目の前に、対象として存在し、ありありと見える。
対象化を離れるとき、見えるべきものが見えるのかもしれない。