贈与

南アフリカのサン族のハンターは、狩った獲物をなんら貢献しなかったものにも分ける。

分配されたほうは、とりたてて礼を言うわけでもなく、ときに「獲物が小さい」などと非難めいた声をあげるという。


指弾されたハンターは抗議するわけでもない。
彼らはおおむね所有に頓着せず、惜しみなく与えることに満足している様子だ。



経済活動の原始の姿は贈与であったという。

贈与は気前の良さでも純朴さの現れといった個人の資質にかかわる問題ではなく、
“これまで”と“これから”を比較し、蓄財に勤しむ心性と縁があまりないからではないか。
「いま・ここ」を離れた時間の認知の仕方に親しみがない。


恐慌をもたらすのは畢竟、期待や予測と現実とのギャップとすれば、そこには時間や空間の認知に関する歪みがある。

現代に特有の時空観とはどういうものか。
過去を参照し、未来を予測し、現実を確定しようとするが、それは常に仮想現実でしかない。