観測者の位置

中国の五行説では方角が五つあるとする。
東西南北そして真ん中。


2000年前に編纂された医学書黄帝内経』を読んだことがある。この医書は五行に基づいて書かれている。
当初、真ん中の意味がわからなかったが、あるとき「真ん中」が<観測者>の位置であると気づいた。


いまでは、東から上った太陽が西に沈むと思っているが、中国の古代の考えでは、東から上った太陽は南で最高点に達し、西に傾き、北に没する。
古代人は、決して東西という単線で太陽の軌道を描いていない。


宇宙に向けて打ち上げられたロケットは直線に飛んでいるように見えるが、実際は螺旋を描いているという。
宇宙において直線とは、概念上の出来事でしかないようだ。



五行説では、真ん中に観測者を置いたが、その観測者は私の見た事実から天体を見たのではなく、アウトサイドから見た天体のデザインを直観した。

だから太陽は東から北に沈むという立体的な軌跡を描くと記したのだろう。


世界にあるのは概念で区切られた上下左右ではなく、観測者のいる位置から見た内外しかない。

そして恐らく現実には内外という境もない。