所有欲


虎は虎同士で争うことはあるが、決して獲物を狩るように仲間を殺しはしない。
だが人は獲物を狩るように、同種に向けてナイフを閃かせ、銃口を突き付ける。


ニホンザルは食料資源の所有を巡って闘争するが、仲間を殺害することはなく、
優劣の確認に終始する。序列化社会のきつさを人はそこに見て取るのだが、
秩序の安定を彼らは優先しているようだ。


食やパートナーといった所有をめぐって葛藤を抱くと、
動物はただちに他者を排撃し、優劣関係に持ち込むと思いがちだが、
排撃は殺害ではなく、優劣は収奪とは異なる。
人だけがそれを行う。


ゴリラはたとえ激しい争いがあっても、互いの目を覗き込み和解を行う。


彼らにも所有の概念はある。だが人間のように所有欲の肯定はないようだ。


自ら抱いた欲望を正当化せんと己を駆り立てるとき、
同種の殺害も辞さない暴力が発動するのかもしれない。