仮想現実

外界を見るとき、外の何かを見ているつもりでありながら、そのとき対象ではなく、私は私の見方を見ている。
しかし、私の見方を離れた「ものそのもの」があるわけではない。

沈む夕日を見る私。私と独立した夕日があるわけではなく、夕日と私だけでなく、それを含む一切が私の意識を超えた中で刻々と変化するのであれば、夕日と私だけの関係のみを取り上げて、落日の様子を記述することは、世界を断片化することでしかない。

現実と名付けられるものは、意識が対象化できるもののみであるが、意識が対象化できるということは、現実の断片であって、真の現実ではないということだ。

断片的な現実を現実と呼び、予測に対処に大わらわとなり、右往左往するが、仮想現実の中の出来事を現実とはき違えることがそもそもの誤りなのかもしれない。