所有の記憶


あらゆる事物は滞ることなく移ろい行くことが、疑いようのない事実ならば、
私は何かを確かに所有することなどできない。

心理を記述し、後生大事に記憶として取り置くこともできない。


記憶は池に投げ入れた小石の水面に広げる波紋のようなものだ。
起きた事実とは、小石と水との出来事によって生まれた別の何か。