一陣の風


過去と過去の記憶は異なる。


過ぎ去ったことは、一陣の風のようなもので、風の吹いたことを思い返しても、
そのとき吹いた風は過ぎ去ってしまった。



記憶とは、常にいま改めて、そのつど思い返す出来事でしかない。

記憶はいつもいま作られる。
それはいつ起きたかははっきりとわからない、いつかの出来事だ。


記憶はいま思い返す「かつてのこと」であり、
つまりタイムラグが記憶の別称なのかもしれない。


時間のずれが記憶だとしたら、それは定位置も定量もない。